顧問税理士の立場について説明して下さい

取引関係の説明だけで税務調査が何事もなく終わればよいですが、現実には思いもよらないことに対し説明を求められ、いくら説明しても調査官が納得してくれずに夜も眠れないほど思い悩むなんてことはよくあります。調査が進むにつれてあぶりだされる問題点をめぐって調査官と議論するわけですが、何となくやり込められてしまいます。これは相手が税務のプロだからでも、何でも知っている怖い税務職員だからでもなく、議論には議論の仕方があるためです。自分が正しいと思うことをいくら言っても相手には通じないのは、調査官も自分が正しいと思うことを主張しているからです。お互いが正しいと思うことをぶつけ合うためどこまでも話しがかみ合わず、最後は社長が根負けしてどうでもよくなり、早く終わらせるために払える額を払うというケースは多いです。国税当局であれ納税者・税理士であれ、相手方との議論に負けないためには自分が正しいと思うことを主張するとともに、相手が事実関係を誤認していることや把握していない事実が他にあることを指摘し、そもそも論理の組み立てがおかしいことを指摘するしか方法はありません。こうしなければ終わらないのが議論の難しいところであり、自分の正しさを立証しつつ相手の議論の組み立ての不備や矛盾点までも立証することは非常に難しいことです。このようなことを、事実関係をもとに法律関係の中で指摘することは一層難しいことなので、社長は本業にまい進してこのようなことは信頼できる税理士の先生に任せましょう。
顧問税理士の税務調査での立場については、税理士法に税理士の立場や身分、役割などが規定されています。税理士法第一条では次のように、税理士は独立した公正な立場で納税義務の適正な実現を図ることが使命とされています。
・税理士の使命
第一条税 税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。
納税者の立場に立って納税者の便宜を図るということでなく、 「独立した公正な立場」に立つものとされており、その上で「租税に関する法令に」基づいて税務処理を行い、「納税義務の適正な実現」をはかることがひいては「納税義務者の信頼にこたえ」るものだということです。つまり、納税義務の適正な実現がそもそも「納税義務者の信頼にこたえる」ものだと言っています。税理士の立場、役割についてはこれでわかりましたが、そもそも各税法はこの納税義務の適正な実現をどのように規定しているのか税法の規定を見てみましょう。
・国税通則法
(目的)
第一条 この法律は、国税についての基本的な事項及び共通的な事項を定め、税法の体系的な構成を整備し、かつ、国税に関する法律関係を明確にするとともに、税務行政の公正な運営を図り、もって国民の納税義務の適正かつ円滑な履行に資することを目的とする。
・法人税法
(趣旨)
第一条 この法律は、法人税について、納税義務者、課税所得等の範囲、税額の計算の方法、申告、納付及び還付の手続並びにその納税義務の適正な履行を確保するため必要な事項を定めるものとする。
・所得税法
(趣旨)
この法律は、所得税について、納税義務者、課税所得の範囲、税額の計算の方法、申告、納付及び還付の手続、源泉徴収に関する事項並びにその納税義務の適正な履行を確保するため必要な事項を定めるものとする。
・相続税法
(趣旨)
第一条 この法律は、相続税及び贈与税について、納税義務者、課税財産の範囲、税額の計算の方法、申告、納付及び還付の手続並びにその納税義務の適正な履行を確保するため必要な事項を定めるものとする。
・消費税法
(趣旨)
第一条 この法律は、消費税について、課税の対象、納税義務者、税額の計算の方法、申告、納付及び還付の手続並びにその納税義務の適正な履行を確保するため必要な事項を定めるものとする。
このように各税法とも納税義務の適正な履行の確保をその趣旨として定めており、課税当局も税理士も双方ともに納税義務の適正な履行、納税義務の適正な実現を図るものとされています。つまり、当局と税理士は決して敵対するものではなくむしろ同じ方向を向いており、目指すところも同じということです。したがって、税務調査で問題となっている事実関係を法に則して分析、解釈すれば、納税義務の適正な履行、実現が図られ、おそらくは同じ結論に達するはずなのです。それぞれの立場上、やむを得ず争いを選択することがあるかもしれませんが、争わないで事案をまとめることが税務調査の正しい受け方、上手な受け方であり、一番大事なことではないでしょうか。しかし、これで収まらないからこそ、皆さん税務調査で苦労して議論に議論を重ねるわけです。いずれにせよ、議論の組み立てには法律論的な頭を働かせなければならず、そのためには基礎的な学力として法律に関する知識が必要というわけです。
また、税務行政のあり方について平成22年度の税制改正大綱に興味深いことが2つ書かれています。まず、納税者権利憲章(仮称)の制度です。国民主権にふさわしい税制を構築していくため納税者の税制上の権利を明確にし、税制への信頼確保に資するものとして、「納税者権利憲章(仮称)」を制定します。具体的な改革として、更正等の期問制限について、課税庁からの増額更正の期間制限が3〜7年であるのに対して、納税者からの減額の更正の請求は期間限定が1年となっていることが上げられています。また、具体的な記述はありませんが、無予告の税務調査も見直してすべて事前通知となるのではないかといわれています。次に、国税不服審判所の改革です。国税不服審判所の機能、つまり課税処分に納得できない納税者の権利を救済するという機能を十分に果たすために、組織や人事などを見直そうとしています。また、日本年金機構を廃止してその機能を国税庁に統合、歳入庁を設置するという方向で検討が進められています。

法令の種類について説明してください

法律は社会のあり方を定めているルールですが、その法律も一定の約束事を基にして作られています。そもそも世の中にはどんな法令があるのか、「法令の読み方」という本を参考にして簡単に説明していきます。
初めに、憲法は以下の条文のように国家と国民との関係を定めており、法律の法律と言われています。
第三十条 国民は、法律……により、納税の義務を負ふ。
第八十四条 ……租税を課し、又……変更するには、法律……による……。
第九十八条 日本国が締結した条約……国際法規は、これを誠実に遵守する……。
法律とは、国会の議決を経て制定される法です。これに対し国会が制定するのではなく、国の行政機関が制定する法を広く「命令」といいます。命令はその制定権者によって、内閣が制定する「政令」、内閣総理大臣が制定する「内閣府令」、各省大臣が制定する「省令」などがあります。内閣が制定する「政令」には、執行命令としての「実施政令・委任命令としての「委任政令」があります。政令の形式的効力は法律に劣りますが、委任政令の効力は、委任された範囲内では委任した法律と同じ効力を有します。また、執行命令は法律の規定を執行するために必要な手続き的事項を定めるものとされています。法人税法施行令の冒頭には、次のように記されています。
内閣は、法人税法(昭和四十年法律第三十四号)の規定に基づき、及び同法を実施するため、法人税法施行規則(昭和二十二年勅令第百十一号)の全部を改正するこの政令を制定する。
よって、法人税法施行令は内閣が制定する「政令」で執行命令としての「実施政令」であることがわかります。法人税法施行規則の冒頭には次のような記載があります。
(昭和四十年三月三十一日大蔵省令第十二号)
最終改正:平成二一年八月二八日財務省令第六一号
法人税法及び法人税法施行令の規定に基づき、並びに同法及び同令を実施するため、法人税法施行細則(昭和二十二年大蔵省令第三十号)の全部を改正する省令を次のように定める。
したがって、法人税法施行規則は各省大臣が制定する「省令」であることがわかります。
続いて、不文法についてです。慣習法とは、人々の間で行われている慣習的な規範のことです。社会の秩序を維持するためには、その慣習にしたがう必要があると人々が確信しているものを指し、法的効力を有するとされています。以下の法人税法施行令第百三十七条において、土地を賃借する際に支払う慣行のある権利金という形で出てきます。一時金を収受することが法律で決められているのではなく、取引上の慣行として一時金の収受が行われているということは、まさにその地域の人々の間で行われている慣習的な規範ということです。
(土地の使用に伴う対価についての所得の計算)
第百三十七条 借地権…-…の設定により土地を使用させ、……その使用の対価として通常権利金その他の一時金を収受する取引上の慣行がある場合においても、当該権利金の収受に代え、……相当の地代を収受しているときは、当該土地の使用に係る取引は正常な取引条件でされたものとして、その内国法人の各事業年度の所得の金額を計算するものとする。
裁判は、「個別具体的な事件」を具体的に拘束することにとどまるので、判例は一般的に法的拘束力をもつわけではありません。しかし、一般的にいって裁判所は同じような事実関係であれば過去の裁判と異なる裁判をすることもないと考えられることから、判例も事実上の拘束力を持つといえると考えられています。特に最高裁の「判例」は下級審の「裁判例」とは異なり、事実上の拘束力を有すると考えられています。税務訴訟で同じような事例が裁判になったときには、同様の判断がくだされると考えてよいでしょう。ただし、もともと判例は個別事案の争いに裁判官がある一定の解決を与えたものと考えられることから、判例、判例といってしまうと争い方のテクニックによって裁判官の心象が決められることとなります。そもそも税法はどのように規定したかったのか、税法の意味するところは何なのかという視点を見失わないようにする必要があります。
そして、国際法についてです。条約は、憲法の定めるところにより国内法に優先して適用されると考えられており、つまり、国内法ではない条約があたかも国内法のように、むしろ国内法の定めるところを超えて優先的な法的拘束力を有すると考えられています(憲法第九十八条を根拠とする)。しかし、条約は国家と国家の間の権利義務を定めているものなので、そのままでは国内法のようにストレ一トに法的効力を持ちません。条約の内容があたかも国内法と同じように私人間、または私人と同家との間に適用可能なものとするには、一般的には別の立法措置が講じられなければならないと考えられています。税務上も各国との間に租税条約というものが結ばれており、日本国のある法人が条約締結国の法人に特許権の使用料やロイヤルティなどを支払う際の源泉徴収税率を、国内法で定める税率より低い税率で定めています。ところが、この軽減税率の適用は国と国との関係で決まっているに過ぎないので、日本の法人がこの条約の適用を受けるためには、別途、「租税条約の実施にともなう所得税法、法人税法および地方税法の特例等に関する法律」すなわち、実施特例法の定める諸手続きを取らなければなりません。
最後に、その他の法規について説明します。まず、告示とは公の機関がその決定した事項その他の一定の事項を公式に広く一般に知らせること、またはその形式の一種を指します。国税に関する申告期限を指定するために告示が出されるケースがあります(平成18年9月11日の国税庁告示第22号は、新潟県の長岡市のある地域の国税の申告期限を、本来の期限から別途の期限を指定するために出された)。次に、通達とは行政機関が所管の諸機関及び職員に対して発する命令や示達のことです。これは職務運営に関する事柄や法令の解釈、事務手続き上の運用方針等に関する事項を示したものであり、下級の行政機関等を法的に拘束しますが、直接国民や裁判所を拘束はしません。しかし、専門家が専門的な見地から作成しているものなのである一定の権威を持ち、下級機関は通達に反した処理をすることができないため、現実の行政活動はこれらの通達に則っておこなわれます。税務の世界では、法人税、所得税、消費税など、各税目別に基本通達が制定されています。資産税関係では財産評価通達が定められ、租税特別措置法にも通達が定められています。さらに個別案件に対しても個別通達が定められており、まさに通達だらけで通達行政などといわれています。この通達に則して税務調査が行われ、通達の定めるところにしたがっていないということで否認が行われますから、非常に大事なものとなっています。通達に則して行われた調査結果に対して納税者が不満を持ったとしてもあとは裁判に訴えるほかないため、通達は事実上大きな影響力を持っています。そして、訓令とは職務運営の基本に関する命令事項を内容とするものです。国税庁レポート2005年度版(HTML)において、「10.国税庁の事務の実施基準及び準則に関する訓令」として定められているものがあります(国税庁ホームページで閲覧可能)。
また、条理とは理性による物事の筋道または社会通念であり、具体的に当てはまる法令がないようなときにも裁判官は条理を推考して判断しなければなりません。税務調査上でも個別問題点について判断する場合、社会通念に基づいて判断しなければならないことがよくあります。例えば、所得税基本通達36-21には次のように定められています。
36-21 使用者が永年勤続した……の表彰に当たり、……招待し、又は……を支給することにより……利益で、次に掲げる要件の……ものについては、課税しなくて差し支えない。
(1)当該利益の額が、当該役員又は使用人の勤続期間等に照らし、社会通念上相当と認められること。以下略
(課税しない経済的利益……創業記念品等)
36-22 使用者が……支給する記念品……ものについては、課税しなくて差し支えない。
(1)その支給する記念品が社会通念上記念品としてふさわしいものであり、かつ、そのものの価額(処分見込価額により評価した価額)が1万円以下のものであること。以下略
法令の効力については、時に関する効力、場所に関する効力、人に関する効力の3つに分けることができます。
・時に関する法令の効力
法令は制定された後、実際に交付・施行されて始めて効力が現実のものとなります。そのため、何時から施行するかという施行期日の定めがその法令の効力の始期を定める上で大きな意味を持ちます(通常、法令は官報に掲載することによって公布されます)。この施行期日はその法令に定められている附則の冒頭に定められており、その日から効力を発揮することとなります。
・場所に関する法令の効力
一般的に、日本の法令は日本の領土にわたって効力を有することとなるため、原則的に日本の領土外には効力はおよびません。しかし、日本の領土内であっても米軍基地などには、日米安全保障条約や地位協定などにより日本の法令は効力を有しないこととなっており、日本の法令の効力はおよびません。逆に日本の領土外でも、公海上にあるわが国の船舶や航空機内において効力がおよぶ場合もあります。
・人に対する法令の効力
日本の法令は日本人・外国人を問わず、日本の主権がおよぶ領土内にいる人に効力がおよびます(属地主義)。この原則的な属地主義だけでは外国にいる日本人に効力がおよばないため、日本国民が国内外にいるかどうかにかかわりなく、日本の法令の効力が日本国民におよぶとする属人主義で補完しています。税法は外国人に対しても適用され、法人税法では第二章納税義務者の第四条の第3項で次のように定められています。国内源源泉所得は、第三編の「外国法人の法人税の第一章国内源泉所得の第百三十八条」にて、いくつかの例が定められています。
3 外国法人は、第百十八条(国内源泉所得)に規定する国内源泉所得を有するときは、……この法律により、法人税を納める義務がある。
個人の場合は所得税法の第二条の定義規定で、居住者、非永住者、非居住者と区別されて納税義務が課されており、それぞれについて課税関係が整理されています。
第二条 ……次に掲げる用語の意義は当該各号に定めるところによる。
 略
三 居住者国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて一年以上居所を有する個人をいう。
四 非永住者居住者のうち、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去十年以内において国内に住所又は居所を有していた期問の合計が五年以下である個人をいう。
五 非居住者居住者以外の個人をいう。
これを受けて、次の第五条で納税義務が課されています。
第五条 居住者は、この法律により、所得税を納める義務がある。
2 非居住者は、次に掲げる場合には、この法律により、所得税を納める義務がある。
一 第百六十一条(国内源泉所得)に規定する国内源泉所得(次号において「国内源泉所得」という。)を有するとき(同号に掲げる場合を除く。)。
二 その引受けを行う法人課税信託の信託財産に帰せられる内国法人課税所得(第百七十四条各号(内国法人に係る所得税の課税標準)に掲げる利子等、配当等、給付補てん金、利息、利益、差益、利益の分配又は賞金をいう。以下この条において同じ。)の支払を国内において受けるとき又は当該信託財産に帰せられる外図法人課税所得(国内源泉所得のうち第百六十一条第一号の二から第七号まで又は第九号から第十二号までに掲げるものをいう。以下この条において同じ。)の支払を受けるとき。
3 内国法人は、国内において内国法人課税所得の支払を受けるとき又はその引受けを行う法人課税信託の信託財産に帰せられる外国法人課税所得の支払を受けるときは、この法律により、所得税を納める義務がある。
4 外国法人は、外国法人課税所得の支払を受けるとき又はその引受けを行う法人課税信託の信託財産に帰せられる内国法人課税所得の支払を国内において受けるときは、この法律により、所得税を納める義務がある。

受忍義務について説明してください

税務調査は法律上の手続きとしておこなわれるものであり、調査官から調査の通知を受けた社長は税務調査を必ず受ける必要があります(調査の日程などはお互い都合のいい日に調整することが可能です)。これが受忍義務であり、憲法のもとでは基本的人権(人としての立場、生存権など)はまったく平等で税務署の調査官、会社の代表者、平社員という立場の違いで差別されませんが、調査官と社長の立場は法人税法の世界では権限と義務の関係に立つわけです(ただし、この規定は上下関係を決定づけるものではありません)。
調査官の質問に法的裏づけを与えなければ違法、不法な質問となり、納税者に回答する義務を課さないと社長や担当者は調査官の質問に答える必要はありません。そうなると国の根幹の一つである税務行政が円滑に機能しないため受忍義務があるのです。税務調査が法の定めるところに基づいて行われるものであり、調査官に対して事実関係を的確に説明するものということを理解することで、調査を受けることになった際に過度な不安に陥ったり、不必要な拒否反応を起こすこともなくなります。これが税務調査を上手に、正しく受けるための第一歩です。代表者の立場としては、取引の事実関係について関係書類をもとに淡々と説明していけばよいというだけです。

調査官の質問検査権について説明してください

税務調査というと、帳簿書類をみながら税務調査官がする一方的な質問にうまく返答できなかった社長が修正申告を余儀なくされるというシーンが浮かびますが、税務調査は税務当局と納税者との間の法律関係であり、事実はまったく異なります。税務調査をする際の議論は法人税法・所得税法などをもとに、まず当該職員が納税者に対して取引の事実関係について質問をし(質問検査権にもとづいて)、次にその分析結果が税法通達に適合しているのかを検討、そして検討した結果が法にしたがっていないと認められる事柄について修正申告するように求めるというプロセスです。
税務調査に関して法人税法を例にとって見ると、まず調査官の質問検査の権限について次の規定があります。これは、調査対象となった税務署もしくは国税局所轄の法人そのものに対する調査権限があるというものです。
(当該職員の質問検査権)
第百五十三条 国税庁の当該職員又は法人の納税地の所轄税務署若しくは所轄国税局の当該職員は、法人税に関する調査について必要があるときは、法人に質問し、又はその帳簿書類その他の物件を検査することができる。
これに対して、その法人の取引先に対してもその法人との取引に関する調査(反面調査)の権限を定めた規定が次の154条の規定です。
第百五十四条 国税疔の当該職員又は法人の納税地の所轄税務署若しくは所轄国税局の当該職員は、法人税に関する調査について必要があるときは、法人に対し、金銭の支払若しくは物品の譲渡をする義務があると認められる者又は金銭の支払若しくは物品の譲渡を受ける権利があると認められる者に質問し、又はその事業に関する帳簿書類を検査することができる。
また次のように、税務署の調査官は所属する税務署の所轄区域外に存在するその納税者の本店、支店、工場や営業所に対しても、その区域を管轄する税務署に調査を委託しておこなうことが可能です。
第百五十五条前 ニ条の規定は、国税庁の当該職員及び納税地の所轄税務署又は所轄国税局の当該職以外の当該職員のその所属する税務署又は国税局の所轄区域内に本店、支店、工場、営業所その他これらに準ずるものを有する法人に対する質問又は検査について準用する。
なお、税務調査は刑事手続きではなく行政手続きとしておこなわれることが156条で示されています。
第百五十六条 前三条の規定による質問又は検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
これに対して納税者の立場は法人税法162条で以下のように規定されており、調査官の質問に答えなかったり、うそをついたり、真実でない帳簿を提出した納税者は1年以下の懲役または20万円以下の罰金に処されます。もちろんこの条文が適用されるのは告発されて、裁判を受け有罪になるなどの極端な場合であり、調査中に出来心で少しうそをついたりした場合には適用されません。
第百六十二条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
一 略
二 第百五十三条又は第百五十四条第一項若しくは第二項(当該職«の質問検奄権)(これらの規定を第百五十五条(質問検杏権に係る準用)において準用する場合を含む。)の規定による当該職員の質問に対して答弁せず若しくは偽りの答弁をし、又はこれらの規定による検査を拒み、妨げ若しくは忌避した者
三 前号の検査に関し偽りの記載又は記録をした帳簿書類を提示した者

実地調査・帳簿調査・反面調査について説明してください

実地調査とは、実際に法人に臨場して調査することであり、最初に代表者に面接して会社の概要を聴取します(会社の業務内容や会社の歴史、代表者の方の経歴、また売上の計上方法や仕入れ、外注の決済方法など)。概況をしっかりと聴き取って会社の状況を把握しておかないと、帳簿調査の際に疑問点があってもいまさら社長に聞けないことになるので、調査官にとっては一連の調査事務の中でこれが一番大事で重要な手続きです。納税者側としては作為的な説明はあとで矛盾が生じますし、質問されたことに対して誠意を持ってありのままを説明するのが大切であり、誤解を招かないようにしましょう。調査官の質問検査は尋問ではないので、受け答えの際の納税者の表情から何かをつかみ取るようなことは通常はありませんが、社長自身に売上を除外しているなど後ろめたいことがあると顔に出てしまうものであり、落ち着かなくなります。ベテランの調査官ともなると社長の挙動から何かを感じ取り、それとなく探りをいれて尻尾をつかまれるので、普段から適正申告を心がけましょう。これが税務調査の正しい、上手な受け方であり、こうして会社の概況聴き取りが終わると調査官は帳簿調査に入ります。
帳簿調査とは、会社の元帳の各勘定科目の金額、内容を請求書、領収書をもとに調査することです。一番新しい決算期から見はじめ、以前は3期分遡及して見ていましたが現在は5期分遡及します。(平成16年改正税法の附則)
附則(平成十六年三月三一日法律第一四号)抄
第一条この法律は、平成十六年四月一日から施行する。
(国税通則法の一部改正に伴う経過措置)
第十七条……「新国税通則法」……第七十条第一項の規
定は、施行日以後に同項第一号に定める期限又は日が到来
する法人税について適用し、……。
売上計上が適正かどうかの調査は、売上の請求書の控えと売上帳の突合(とつごう)、領収証の控えと入金額との突合によっておこなわれ、不突合があったときにはいわゆる売上除外ということが考えられます。仕入れ、外注費についても同じように取引先から来た請求書と仕入帳、買掛金台帳との突合をします。
帳簿調査で問題点が見つかった場合は(売上が計上されていない場合など)、相手先の会社に反面調査をして事実関係の確認をおこないます。本当に漏れている場合は決済方法を確認し、個人口座や簿外預金への振込み、小切手であれば簿外口座での取り立てなどの把握に努めることとなります。具体的には、まず取引の相手先の法人に臨場して支払い方法が振込払いなのか、小切手、手形払いなのかを確認します。振込みの場合は振込先の銀行にさらに臨場してその口座の入金内容を調べる銀行調査をおこない、徹底的に解明することとなります(口座の名義人が誰なのか、社長の個人名義の口座なのか、法人名義の口座であっても法人の帳簿に計上されていない簿外口座なのかなど)。さらに、その口座からの出金についても銀行の出金伝票を調べ、振込出金であればその銀行に出向いて調査します。このようにして不正計算の全貌が明らかにされていきます。もし反面調査を受ける立場になったら、反面調査を拒否するなど非協力的な態度を取ると相手の不正計算に加担したと思われて自分が調査を受けることとなるので、当局の調査官に対してしっかり協力しましょう。
調査で何らかの問題点があった場合、調査官は修正申告を提出するように促しますが、これを「修正申告を慫慂(しょうよう)する」と言います(慫慂とは、新明解国語辞典によれば「そうする方が君のためだと言って、勧めること」)。税務署から指摘された問題点に納得することができずに修正申告の提出を拒否した場合は、税務署としては更正という行政処分をします。これに対して納得がいかない納税者側は、まず調査を実施した当該課税庁に対して異議申し立ての手続きを行い、さらにそこでの決定に納得がいかない場合は国税不服審判所に不服申し立てをします。それでも不満がある場合は裁判に訴えますが、そうならないように税務調査を終わらせることが大事です。しかし、どうしても間題の案件について考え方の一致を見られず、国税不服審判所や裁判所の判断を仰ぐため不服申し立てをする場合があります。なかには調査官の態度が気に入らず、納得いく説明がないため修正申告を出したくないなど、更正を税務署長に異議申し立てをすることもあるそうです。修正申告書の提出は最終期だけの修正ですむこともありますし、過去の事業年度に遡ることもあります(通常の場合は最大で5期、さらに不正計算があった場合は7期遡る)。

KSKシステムについて説明してください

税務調査は、法人税調査事案、消費税調査事案ともに同じような手続きでおこなわれます。まず、調査部門の統括官が2月決算から申告書を見始め、2月決算法人の場合には4月末に申告書が提出されます。その申告書は、資産課税や源泉所得税部門を回付されて法人課税部門に届くのが6月半ばです。一方、事務年度の開始が7月ですから、時期的な関係で2月決算の法人から見はじめ、売上金額や所得金額、販売費や一般管理費の内容を過去の申告書と見比べながらどの法人を調査するかを選んでいきます(調査法人の選定事務)。ここで選定の助けとして活躍するのが、国税綜合システム(KSK)によって打ち出しされた選定支援のための計表です。
KSKシステムは、全国の国税局・沖縄国税事務所と税務署をネットワークで結び、申告・納税の事績や各種の情報を入力することで、国税債権などを一元的に管理します。それとともに、これらを分析して税務調査や滞納整理に活用するなど、地域や税目を越えた情報の一元的な管理により、税務行政の根幹となる各種事務処理の高度化・効率化を図るために導入したコンピュータシステムです。平成2年から本格的な開発を始めて平成7年以降順次導入を進め、平成13年からは全国での運用を開始しています。このKSKシステムで作成された計表には、主な損益科目や貸借科目の数字が過去5年程度並べられており、売上総利益率や棚卸し回転率などの各種指標が記されています。これらの指標に異常数値が示されるとそこが調査ポイントとなるので、これらの数値を見ながら統括官が五感の作用を使って調査対象法人を選定します。統括官は会社を何となく調査対象法人として選んでいるわけではありません。税務調査は事案の選定がすべてであり、すべてのことは選定から始まります。また、調査対象に選定された法人をその申告書も含めて事案と呼ぶ習わしがあり、統括官は通常部下に事案を渡して調査するよう指示を出します(自ら調査に赴くこともあります)。これを、事案を指令すると言います。
指令を受けた調査官は、調査対象期の申告書をその前期、前々期の申告書と見比べながら問題点を探り出します(売上の伸びに比して所得の伸びが低調である、巨額の特別損失を計上しているにもかかわらず内訳書に内容の記載がない、売上はさほど伸びていないのに外注費の伸び方が異常に大きいなど)。これらの作業が準備調査であり、業種業態によって手法にもさまざまな方法があります。バ一、クラブなどの飲食業の場合は内観、外観などの現地確認をします。内観調査というのは実際にお客になって店に入り内部の状況の問題点を探ることであり(小売店などの場合はレジを打っているかどうか、現金管理をどうしているかなど)、実際に販売している商品を購入したりなどしてお店の外観、内観を調査します。こうして抽出された問題点を統括官に上げ、さらに統括官から具体的な指示を受けます。準備が整った調査官の頭の中は、すでに調査展開のシミュレ一ションが始まっており、ここで電話がなるわけです。当局はここまで準備をしているわけで、何も不正をしてなくても不安な気持ちに駆られるのは当然です。

窓口での流れについて説明してください

毎年、個人事業者や法人の代表者の方が税務署に提出している申告所得税や法人税の申告書ですが、これまでは税務署の総務課が申告書等の収受の窓口でした。しかし、平成21年7月に管理運営部門が新設されて申告書等の収受の窓口となっています。窓口での流れをイメージしやすいように法人税の申告書を例に説明していきます。
まず、窓口の管理運営部門で受付印である収受印を押し(収受印の直径の大きさや押印するときのスタンプの色が訓令で決められている)、税務署提出用・会社控え・会計事務所用と通常は3部提出します(それぞれの控えは返してくれます)。収受された申告書は最初に、管理運営部門で売上金額や所得金額などの損益科目の各数字、資本金の金額や貸借科目の各数字がコンピュータに入力され、法人に付されている番号順に並べられます。この番号が法源番号(法人納税者の管理のため設定された整理番号)です。入力済の申告書は資産課税部門に回され、ここで申告書の同族会社等の判定に関する明細書(その法人が同族会社に該当するかどうかを判定するときに用いられる表)にある株主の異動状況を確認します。持ち株数に変動があれば株式の譲渡または贈与がされたこととなり、譲渡所得税や贈与税の問題が生まれます。そして、下半分に株主の住所、氏名、持ち株数等を記したあと源泉所得税部門に回付され、申告書の内訳書の預かり金の明細表をチェックして未納の源泉所得税を把握します。もしもその法人が未納であればその旨を電話連絡などし、徴収決定の事務処理をします。その後、法人課税第一部門に回付されて申告書の形式的な内容の簡単なチェックがおこなわれますが、代表者の住所欄に書き漏れがあるなど形式的で軽微な誤りの場合はその場で法人に電話し、提出された申告書を訂正して会社保存の控えも同様に訂正してもらいます。チェックがすんだらその法人を所掌している部門に申告書が渡され、決算期順、法源番号順に整理されます(2月決算の法人から並び順が始まり、1月決算の法人で終わり)。
電子申告をした場合も書類提出と同様に管理運営部門で受信しますが、事務処理は各税務署によって運営方法が少し異なります(申告書の必要な別表を数枚印刷して綴じたものを書類提出と同じようなルートをたどって回付する場合、受信法人一覧表を各事務系統に通知する場合など)。そのあとは書類提出と同様です。今まで書類で申告し、収受印の押された申告書の控えで提出したことを実感してきた代表者の方々の中には、電子で申告して収受印も押されていない受信通知を見ても申告した実感がわかない方や、そもそも税務署に届いているのかなど電子申告に抵抗感を持つ方もいるでしょう。しかし、世の中は電子・インターネットの時代であり、税務申告も同様です。この流れに乗り遅れないようにすることは大切であり、これは税務申告だけではなく商取引などすべてのことにおよんできます。

特別国税調査官と統括国税調査官について説明してください

調査部で主に税務調査を実施する部署は、東京国税局を例にとると調査第一部に設置されている特別国税調査官と調査第二部から第四部にかけて設置されている統括国税調査官です。特別国税調査官には総括主査、主査、調査官が配置されており、4〜5名でチームを組んでいます。そのチームが担当する業種ごとにKおよびAからFまでの7グループにわけられ、各グループに4~6班、全部で35班設置されています。調査の対象となる法人は製造業や金融業、卸売業、小売業など各業種に属する法人のうち売上金額や会社の規模などがトップレベルの法人です(製鉄業だと新日本製鐡やJFE、海運業だと日本郵船や商船三井、電機業界だと三菱電機や東芝、日立製作所など)。国税の事務年度は毎年7月から開始しますが、事務年度開始早々に調査に着手し半年間かけて12月に終了します。次の調査事案は1月に着手して3月に終了、 3件目は4月着手の6月終了というサイクルで1年が過ぎていきます。年間に3社の著名な大規模法人の税務調査をおこなうので、社会的な影響も大きく調査官も苦労しますし、調査の対応をする各社の税務調査対応チームの方々も大変でしょう。
統括国税調査官は部門を形成しており、総括主査1〜2名、主査2〜4名、調査官5〜8名が配置されており、総勢で12~13人です。調査は主査1名、調査官2名の通常3名体制でおこなわれ、総括主査は全体を取りまとめる部門の要的な存在、部門のトップの統括国税調査官は税務署長級となっています。この統括官部門は、調査第二部には1部門〜16部門、調査第三部には21部門〜36部門、調査第四部には41部門〜56部門というように全部で48部門設置されており、建設業、卸売業、電機、金融証券など業種別に分類されています。同じ業種の法人を次々に調査するので、業種に特有な問題点などその業種に係わるさまざまなことに精通します。
調査期間は会社の規模にもよりますが通常は2、 3週間、会社に臨場して帳簿調査をおこなって反面調査などを実施しながら、最終的に問題点を提示して修正申告の提出を求められるまで3か月程度はかかっています。実際の調査としては、まず調査の日程の予告とともに調査日までにそろえてほしい書類の一覧表が会社に送付されてきます(会社のパンフレットや組織図、内線表、配席図などの外観的なものから、業務内容にかかわる取締役会議事録や稟議書綴り、総勘定元帳、会計データを見るためのパソコン、プリンタなど)。1日目は経理部の担当者から全体的な会社の概況の聴取をおこない、2日目からは調査官は各事業部の責任者からその事業部の業務内容全般についてのレクチャ一を受け、全体を理解しながら調査ポイントを絞っていきます。説明する側としては、実際に行なっている業務内容を大まかに説明し、当局の質問に対しては淡々と答えていくという姿勢が大事です。3日目以降は帳簿調査に移行し、稟議書や各種議事録から全体像をつかんで要調査項目を絞っていきます。担当者が次々に呼ばれて問題点が徐々に明確になると同時に絞り込まれていき、おかしい点があれば厳しく迫及を受けることになります。この時期には、調査官に対する会社側の応答は誤解を受けないような説明をしなければならず、なんでもないと思って発したひと言があとで大きな意味に取られてしまうことがあります。説明を誤魔化しても嘘をついても必ずばれるので、信頼できる税理士に相談しなければなりません。税務的な観点から専門的な説明を的確にすることができないために本来意図するところが当局に伝わらず、当局のスト一リーや仮説に乗ってしまって取引事実が自ら表そうとしている真実とまったく異なる結論になるケースはよくあることです。会社の経理担当者も自分が何をいっているのか、そもそも何を言いたかったのかわからなくなり、おかしいと思いながらも当局の結論に従うことになるので、事実関係や取引関係を分析して法令通達に則し、その意味するところを当局に説明する能力が必要です。このようにして現場における調査が終了し、修正申告書を提出して納税をすませたところで一連の調査の流れが終わりますが、会社の取引のどういう点が問題になったのか、どこがどのように悪かったのかを社長がしっかり分析しなければなりません。同じ間違いを繰り返さないように十分に管理・監督することが税務調査の上手な受け方です。
なお、調査部の調査に関して大きな影響力を持っている部署は調査審理課であり、調査終了後に調査官が起案した決議書の審理をおこないます。決議書とは、修正申告書に記された勘定科目の内容の課税根拠を示している書類であり、法令通達に照らして課税するべき項目であるということの理由が記されており、上司の決裁を受けるために必要です。この決議書の審理を行うほか、調査の途中に調査官から問題点の相談を受けて課税するべきかを判断します。この審理課の見解は部内のみならず対外的にも大きな権威を持ち、審理課が認めない限り課税関係が解決しないと言われています。